『面白い小説を見つけるために』(小林信彦)
『面白い小説を見つけるために』(小林信彦)は、そのタイトルの通り面白い本を紹介してくれる内容だと思っていたが、それにとどまらず日本の文学にかかわる大きな問題を教えてくれた。
この三十年間に、日本文学から放逐された<物語>はどこへ行ったか。エンタテイメント系の小説の中にひろがったかというと、必ずしもそうではない。
答えの一つは、まんがである。
自分がこれまでに読んできた本を思い返しても、うなづいてします。なぜか海外の翻訳物を読むことが多く、自分ながらなぜかと思っていたが、つまり日本の本には<物語>として面白いものがないと感じていたのだろう。ロバート・ラドラムとかクライブ・カッスラーが好きだけど、あのレベルの日本の作家にほとんど巡り会ったことがない。(最近知った面白い作家は藤沢周平。)
それに対して、TVで接するアニメには、「ワンピース」のように破天荒だけど、物語として面白いと大人でも認めてしまうものがある。
芥川賞が話題になったように、私小説が明治以来日本の本流なんだろうな。あの二作品にもはなから興味がないのも、自分が物語好きだったからなんだと気がついた。
さて、本書は私が好きな作家に言及して締めくくられる。
それにしても、手をつけていない<面白そうな本>は、まだ、まだあまりにも多い。未読のデイヴィッド・ロッジが二冊、トニー・ケンリックが数冊、本棚の隅で、ぼくを待っている。
角川文庫に入っていて、残念ながら今や絶版も多い
トニー・ケンリックの本は最高。私が、本を読んでいて声を出して笑ってしまった唯一の作家がトニー・ケンリックです。翻訳もいいからだろうけど、映画のようなテンポや描写ができているからなんだろうな。
あとがきでは、もう一人の好きな作家
ジャック・フィニィにも言及しているので、ますますうれしくなった。
今やコレクションになったのかもしれないトニー・ケンリックとジャック・フィニィの本を読み返してみようかな。
『面白い小説を見つけるために』
Posted by nino at June 6, 2004 01:00 PM
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